オートレース補助事業による検診車整備

公益財団法人JKA様より、『平成26年度オートレース公益資金による体育事業その他公益の増進を目的とする事業に関する補助金』による補助(10,500,000円)をいただき、新しい胸部X線デジタル検診車1台を導入いたしました。
今後、より多くのみなさまに対し受診機会を提供し、結核や肺がんの早期発見など健康の増進に大きな役割を果たしていきたいと考えております。




【特 徴】

ノンステップバスをベースに使用した検診車です

 ノンステップバスをベースとすることにより、地面と検診車の床の段差を少なくし、お年寄りや障がいをお持ちの方が受診しやすいよう配慮しております。  
 車いすをお使いの方も、スロープを用いて乗車することが可能となっております。電動リフトによる乗車と比べ、上下の動きが少ないことから、不安感を低減できるのではないかと期待しております。  
 また、バス自体の床が低いことに加え、車内の天井高は高くなっており、圧迫感の少ない空間となっております。
 なお、ノンステップバスをベースとするレントゲン車は日本初となります(当院調べ)。
日野自動車株式会社製のノンステップバスである「ポンチョ」がベース車両となっております。

幅広い方々にやさしい検診車です

 今回の検診車の企画にあたり、車いすをお使いの方が乗車後、スムーズに撮影位置に移動でき、座ったままでの撮影ができること、放射線技師が撮影時の介助を行いやすいことなど、高齢者や障がいをお持ちの方にいかに安全に検診を受けていただくかを徹底的に考えました。35回の院内の会議と、30回を超える外部の事業者との打ち合わせを経て、レイアウトや搭載機器を決定いたしました。
 一般的な胸部検診車は、管球(X線発生部)と受像部が固定されており、受診者の方を上下させて撮影位置を調整しますが、今回の車両は、株式会社大林製作所製の特注スタンドを導入し、管球と受像部を連動させて上下させることが可能となっています。
 この仕組みにより、車いすに座ったままの撮影が可能であることのほかにも、高齢者の方に優しい検診車となっております。
  視覚や聴覚に障がいをお持ちのかたも快適に撮影をうけていただけるよう、音声とイラストと文字で撮影を案内する装置(多言語対応)を設置しております。これにより、外国人の方の検診にもスムーズな対応が可能です。

コンパクトな車体で様々な場所で健診が可能です

 この検診車は、全長6,990mm 全幅2,080mmとコンパクトであり、狭い場所にも容易に入っていけるようになっています。
  当院の巡回検診においては、山間地域の狭い道路に入っていかざるを得ないこともあり、このようなサイズの車両を選択いたしました。コンパクトですが、更衣のためのスペースなどは十分確保できるように工夫しております。
  後述するリチウムイオンバッテリーの静粛性とあわせ、今まで不可能であったような狭い駐車スペースや民家の近隣での検診の実施も可能となりました。

リチウムイオンバッテリーを電源として搭載しています。

 通常、検診車は、電源をとれない場所での撮影のため、発動発電機を搭載しています。しかし、今回の検診車は、ノンステップバスであることから、発動発電機を搭載するスペースはありませんでした。
  そこで、この車両は、検診用のバッテリーとして、容量3kWhの東芝製のリチウムイオン電池SCiBを搭載しています。出発前に電源コンセントから充電を行うほか、走行中に余った電気も使って充電を行い、蓄えられた電気を利用してのレントゲン撮影も可能となっています。
  また、副次的に、発動発電機と比べ、騒音を発生させず、NOxやPMを発生させないため環境にもやさしいという特徴をもちました。
  なお、リチウムイオンバッテリーを電源とするレントゲン検診車は日本初となります(当院調べ)。

低線量で高画質な画像を提供できる高性能検出器を搭載

 この検診車は、最新の富士フイルム株式会社製フラットパネルディテクタ(FPD)を搭載しています。FPDは、X線をデジタル信号に変換するデジタルX線イメージセンサーであり、従来のフィルムに代わって使用されます。
  撮影後1~2秒で撮影画像を確認できるため、撮影中、動いてしまった場合なども、その場で再撮影が可能です。そして、装置自体の感度が高いため、受診者の方へのX線被ばく量も大幅に低減します。
  FPDにより高品質のデジタル画像を得ることができ、読影用の高精細モニターとの組み合わせにより、これまで以上の精度の高い診断が期待できます。 また、従来必要であった、フィルム、現像液などの消耗品を一切必要としないため、環境にやさしいシステムです。
  この検診車では、他にも、画質向上のために、コンパクトな車体であっても、焦点-受像面間距離(SID)2,000mmを確保する、FPDに最適なグリッドを搭載するなどの工夫を行っています。これらにより、じん肺健診なども十分可能な画質を実現しています。

前回の撮影画像との差分画像を生成する胸部経時差分処理システムを導入

 今回、松井田病院では、胸部経時差分処理システムも導入しています。このシステムは、新たに撮影した検査画像と、過去の検査画像を、デジタル処理の上、引き算することで、変化のあった部分を強調して表示し、医師の読影をサポートするシステムです。
  これにより、例えば、毎年、この検診車で健診を受けていただければ、前年の画像との変化が自動的に表示されることにより、骨や縦隔などに重なる病変や、小さい病変などをより見つけやすくなり、肺がんの早期発見などが期待できます。

「ぐんまちゃん」を大きく表示した外装

 今回の検診車は、下記のような要素でデザインが構成されています。
・製作費の一部を補助頂いているオートレースのカラフルなロゴ
・白衣を着た「ぐんまちゃん」 みなさまに親しみをもっていただけるよう、大きく表示しました。
・妙義山をイメージした3本のライン   
  松井田病院より望むことができる妙義山をモチーフとしたものです。
・安中原市の杉並木をイメージした杉の木のイラスト   
  上毛かるたでもうたわれている、安中市の旧中仙道沿いの杉並木を描いています。
  なお、ベース色は、この検診車の先進性を表現すべく、検診車としては珍しい「3コートパールホワイト」色となっております。

病院・企業間の協働により生まれました

 今回の検診車は、松井田病院、株式会社ケイエムオー、東芝メディカルシステムズ株式会社の三者を中心とした多くの企業・団体の協働によって完成いたしました。
  株式会社ケイエムオーには、この検診車の架装を行っていただきました。松井田病院がノンステップバスベースの検診車の製作を打診したすべての企業から断られた中、株式会社ケイエムオーには前向きに検討いただき、設計・施工をいただきました。
  検診車をはじめとする特殊自動車の製作やバスの修理等をその事業とする株式会社ケイエムオーは、群馬県伊勢崎市に本社・工場を構えます。
  松井田病院と株式会社ケイエムオーは、同じ群馬県内という関係があったからこそ、延べ30回を超える綿密な打ち合わせが可能であり、今回の完成にこぎつけることができたと考えています。
  東芝メディカルシステムズ株式会社には、今回、契約の相手方として検診車の受注をいただき、窓口として、搭載機器間の調整を含む統括を行っていただきました。
  また、この検診車には、東芝メディカルシステムズ株式会社製のX線撮影システムを搭載しております。ハイパワーかつコンパクトという特徴をもった東芝メディカルシステムズ株式会社製のX線撮影システムがあってはじめて、今回の車両は実現いたしました。また、リチウムイオン電池を用いてのX線撮影システムの稼働については、事前事後に入念なテストをいただきました。

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